
国家賠償法は、国や公共団体の活動で受けた損害を救済する、行政救済の柱です。この記事では全体像——国家補償の地図、1条と2条、3条・4条、求償、時効、主要判例——を1ページで俯瞰し、各論点の詳しい解説に案内します。
この記事の要点
- 国家補償=国家賠償(違法な行為)+損失補償(適法な行為)の2本柱
- 国家賠償の中心は1条(公務員の違法行為)と2条(公の営造物の瑕疵)
- 3条(費用負担者)・4条(民法準用)・求償・時効まで押さえれば全体像が完成
国家補償の地図——まず全体像から
国や公共団体が国民に与えた損害をカバーする仕組みを、まとめて国家補償といいます。原因行為が違法か適法かで2つに分かれます。
| 国家賠償 | 損失補償 | |
|---|---|---|
| 原因 | 違法な公権力の行使 | 適法な公権力の行使 |
| 根拠 | 憲法17条/国家賠償法 | 憲法29条3項(一般法なし) |
| 例 | 公務員の違法行為・道路の瑕疵 | 土地収用 |
→ 損失補償との違いは損失補償と国家賠償の違いで詳しく解説しています。
国家賠償法の2つの柱——1条と2条
国家賠償法はわずか全6条の短い法律ですが、中心は1条と2条です。
- 1条=「人」の責任:公権力の行使にあたる公務員が、職務を行うについて、故意・過失によって違法に損害を与えたとき。過失責任です。
- 2条=「物」の責任:道路・河川などの公の営造物の設置・管理に瑕疵があったとき。無過失責任です。
→ 1条と2条の要件・判例の詳細は国家賠償法1条と2条の違いで解説しています(外形標準説・高知落石事件など)。
3条——費用負担者も責任を負う
賠償責任を負う者(選任・監督者や設置・管理者)と、費用を負担する者が異なる場合、費用負担者もまた賠償責任を負います(3条1項)。被害者はどちらにも請求できます。賠償した者は、内部関係で責任ある者に求償できます(3条2項)。
4条——民法の準用
国家賠償法に定めのない事項は、民法が適用されます(4条)。判例は、公権力の行使にあたる公務員の失火には失火責任法が適用され、賠償には重大な過失が必要としています。
求償——2つの場面
- 1条2項:賠償した国・公共団体は、公務員に故意又は重大な過失があった場合に限り、その公務員に求償できます(軽過失では不可)。
- 3条2項:費用負担者などが賠償したとき、内部で責任ある者に求償できます。
時効——民法724条の準用
国家賠償請求権の消滅時効は、4条を介して民法724条が準用されます。
- 損害および加害者を知った時から3年
- 不法行為の時から20年
- なお、生命・身体を害する場合は、知った時からの期間が5年に延長されています(724条の2)。
主要判例の全体像
| 論点 | 判例 | ポイント |
|---|---|---|
| 1条「職務を行うについて」 | 最判昭31.11.30 | 外形標準説(非番警察官の制服での犯行も該当) |
| 2条「設置・管理の瑕疵」 | 高知落石事件(最判昭45.8.20) | 無過失責任(通常有すべき安全性を欠く) |
| 2条(河川) | 大東水害訴訟 | 未改修河川は過渡的な安全性で足りる |
学習の順番(おすすめ)
- まず1条と2条の違い(「人」か「物」か・過失が要るか)を固める
- 3条・4条・求償・時効で周辺を固める
- 主要判例を○×で回す
- 損失補償との違いで国家補償の全体像を完成させる
○×一問一答で総点検
Q1. 国家賠償法は、違法な公権力の行使による損害の賠償を定める法律である。
○: 適法な行為による損失は損失補償(憲法29条3項)の領域です。
Q2. 国家賠償法2条の責任は、管理者の過失がなくても、営造物に瑕疵があれば成立する。
○: 2条は無過失責任です(高知落石事件)。
Q3. 国又は公共団体が公務員に求償できるのは、当該公務員に軽過失があった場合である。
✕: 故意又は重大な過失があった場合に限られます(1条2項)。
Q4. 国家賠償請求権の消滅時効には、民法の不法行為の規定が準用される。
○: 4条を介して民法724条が準用されます。
よくある質問(FAQ)
Q. 国家賠償法と損失補償の違いは? A. 国家賠償は違法な公権力の行使による損害、損失補償は適法な行為による特別の犠牲です。原因が違法か適法かが分かれ目です(→損失補償と国家賠償の違い)。
Q. 国家賠償法は何条まである? A. 全6条の短い法律です。中心は1条(公務員の違法行為)と2条(公の営造物の瑕疵)で、3条(費用負担者)・4条(民法準用)と続きます。
Q. 国家賠償請求権の時効は? A. 民法724条が準用され、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です(生命・身体は主観的起算点から5年)。
まとめ
- 国家補償=国家賠償(違法)+損失補償(適法)。
- 国賠の中心は1条(人・過失責任)と2条(物・無過失責任)。3条(費用負担者)・4条(民法準用)・求償・時効まで。
- 主要判例(外形標準説・高知落石・大東水害)を○×で固める。
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