
国家賠償法1条と2条の違いは、行政救済のなかでも毎年のように問われる頻出論点です。ポイントを一言でいうと「1条は「人」、2条は「物」」。1条は公務員の違法な行為の責任、2条は公の営造物(道路・河川など)の欠陥の責任です。要件・責任の性質・判例を、比較表と○×で整理します。
この記事の要点(3行まとめ)
- 1条=「人」の責任:公務員の違法な職務行為。故意・過失が必要(過失責任)
- 2条=「物」の責任:公の営造物の設置・管理の瑕疵。過失は不要(無過失責任)
- どちらも被害者の救済が目的。1つの事故で1条と2条の両方が問題になることもある
結論:「人」のミスか、「物」の欠陥か
国家賠償法は、国や公共団体が国民に与えた損害を賠償するための一般法です(憲法17条を受けて制定)。賠償責任には大きく2つの柱があります。
- 1条=公権力の行使にあたる公務員の違法行為による損害(=「人」の行為責任)
- 2条=道路・河川その他の公の営造物の設置・管理の瑕疵による損害(=「物」の状態責任)
最大の違いは過失が必要かどうかです。1条は公務員の故意・過失が要件ですが、2条は無過失責任で、過失がなくても瑕疵があれば責任を負います。
1条か2条か——まずはこのフローで振り分け
比較表でひと目で整理
| 1条(人の責任) | 2条(物の責任) | |
|---|---|---|
| 対象 | 公権力の行使にあたる公務員の行為 | 公の営造物の設置・管理 |
| 責任の性質 | 行為責任 | 状態責任 |
| 過失 | 必要(故意・過失) | 不要(無過失責任) |
| キーワード | 職務を行うについて/違法性 | 通常有すべき安全性を欠く瑕疵 |
| 代表判例 | 最判昭31.11.30(外形標準説) | 高知落石事件(最判昭45.8.20) |
| 典型例 | 警察官の違法な職務執行 | 国道の落石・道路の陥没 |
1条を分解する(「人」の責任)
1条1項は、①公権力の行使にあたる公務員が、②その職務を行うについて、③故意又は過失によって、④違法に他人に損害を加えたとき、国・公共団体が賠償責任を負う、と定めます。
- 公権力の行使:権力的な作用だけでなく、非権力的な作用(公立学校の教育活動など)も含む広い概念です。純粋な私経済作用と、2条の営造物管理は除かれます。
- 職務を行うについて:判例は外形標準説をとります。客観的にみて職務の外形を備えていれば、本人の意図にかかわらず該当します。非番の警察官が制服を着て行った犯行でも、国・公共団体の責任が認められました(最判昭31.11.30)。
- 代位責任説:通説は、本来公務員個人が負うべき責任を国が肩代わりすると理解します。そのため判例上、被害者は加害公務員個人に直接賠償を請求できないとされています。
- 求償(1条2項):賠償した国・公共団体は、公務員に故意又は重大な過失があった場合に限り、その公務員に求償できます。軽過失では求償できません。
ソクのひとこと
2条を分解する(「物」の責任)
2条1項は、道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために損害が生じたとき、国・公共団体が賠償責任を負う、と定めます。
- 公の営造物:道路などの人工公物だけでなく、河川などの自然公物も含みます。土地工作物に限らず、動産(公用車など)も対象になり得ます。
- 設置・管理の瑕疵:営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。**過失は不要(無過失責任)で、瑕疵は過失より広い概念です。国道の落石による死亡事故で、管理者の過失を問わず責任を認めたのが高知落石事件(最判昭45.8.20)**です。
- 河川の特則:もっとも、未改修の河川については財政的・技術的な制約から過渡的な安全性で足りるとされ、道路より緩やかに判断されます(大東水害訴訟)。
- 求償(2条2項):損害の原因について他に責任を負うべき者(工事業者など)がいれば、その者に求償できます。
関連条文もセットで(3条・4条)
- 3条:賠償責任を負う者と、営造物の費用を負担する者が異なる場合、費用負担者も賠償責任を負います(被害者はどちらにも請求できます)。
- 4条:国賠法に定めのない事項には民法が適用されます。判例は、公権力の行使にあたる公務員の失火には失火責任法が適用され、賠償には公務員の重大な過失が必要としています。
試験で狙われるひっかけ4選
- 「2条の責任には公務員の過失が必要」→ ✕: 2条は無過失責任。瑕疵があれば過失がなくても責任を負います。
- 「被害者は加害公務員個人に直接損害賠償を請求できる」→ ✕: 代位責任説の判例上、個人への直接請求は不可です。
- 「国は、軽過失の公務員にも求償できる」→ ✕: 求償できるのは故意又は重大な過失の場合だけです(1条2項)。
- 「公の営造物に動産は含まれない」→ ✕: 公用車など動産も含まれ得ます。
○×一問一答で総点検
Q1. 国家賠償法2条の責任は、公の営造物の設置・管理に瑕疵があれば、管理者の過失がなくても成立する。
○: 2条は無過失責任です(高知落石事件・最判昭45.8.20)。
Q2. 非番中の警察官が制服を着用して行った違法行為について、国又は公共団体が国家賠償法1条の責任を負うことはない。
✕: 外形標準説により、客観的に職務の外形を備えていれば責任を負い得ます(最判昭31.11.30)。
Q3. 国又は公共団体が損害を賠償した場合、加害公務員に過失があれば、その軽重を問わず求償できる。
✕: 求償できるのは公務員に故意又は重大な過失があった場合に限られます(1条2項)。
Q4. 営造物の設置・管理者と費用負担者が異なる場合、被害者は費用負担者に対しても賠償を請求できる。
○: 3条により、費用負担者も賠償責任を負います。
よくある質問(FAQ)
Q. 国家賠償法と民法709条(不法行為)はどう違う? A. 公権力の行使による損害は、国家賠償法が特別法として優先して適用されます。国が一私人として行う私経済作用(契約など)には、民法709条が適用されます。
Q. 公務員個人に賠償を請求できる? A. 判例(代位責任説)では、被害者は国・公共団体に請求します。公務員個人への直接請求はできません。国が賠償したあと、故意・重過失の公務員に求償する仕組みです。
Q. 1条と2条は同時に主張できる? A. できます。たとえば施設の欠陥(2条)と職員の対応ミス(1条)が重なった事故では、両方が問題になり得ます。
まとめ
- 1条=「人」:公務員の違法な職務行為。故意・過失が必要。外形標準説・代位責任説。
- 2条=「物」:公の営造物の瑕疵。無過失責任(高知落石事件)。
- 求償は故意・重過失のときだけ(1条2項)。費用負担者も責任(3条)。
行政救済法は条文の丸暗記より、「人か物か」「過失が要るか」を○×で繰り返すほうが圧倒的に定着します。あわせて取消訴訟の原告適格と処分性、審査請求と取消訴訟の違いもどうぞ。
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