
違憲判決は数が限られているので、全部覚えきれる数少ない論点です。それなのに落としやすいのは、「違憲=その行為も無効」と早合点するからです。議員定数訴訟では、違憲と判断されても選挙は有効になります。この記事で法令違憲の一覧を1枚の表にまとめ、適用違憲・処分違憲との切り分けまで固めます。
この記事の要点
- 最高裁が法令そのものを違憲としたのは、令和6年までで13件
- 圧倒的に多いのは14条1項(平等原則)違反
- 議員定数訴訟は「違憲だが選挙は有効」(事情判決の法理)
- 政教分離の3件は法令違憲ではない。違憲とされたのは公金支出などの行為
一覧表:最高裁が法令を違憲とした判決
| 年 | 判決・決定 | 違憲とされた規定 | 違反する条文 |
|---|---|---|---|
| 昭48 | 尊属殺重罰規定違憲判決 | 刑法200条 | 14条1項 |
| 昭50 | 薬事法距離制限違憲判決 | 薬事法の距離制限規定 | 22条1項 |
| 昭51 | 衆議院議員定数配分違憲判決 | 公職選挙法の定数配分規定 | 14条1項 |
| 昭60 | 衆議院議員定数配分違憲判決 | 公職選挙法の定数配分規定 | 14条1項 |
| 昭62 | 森林法共有林分割制限違憲判決 | 森林法186条 | 29条2項 |
| 平14 | 郵便法免責規定違憲判決 | 郵便法の損害賠償責任免除・制限規定 | 17条 |
| 平17 | 在外日本人選挙権違憲判決 | 公職選挙法の在外選挙制限 | 15条1項・3項、43条1項ほか |
| 平20 | 国籍法違憲判決 | 国籍法3条1項 | 14条1項 |
| 平25 | 非嫡出子相続分違憲決定 | 民法900条4号ただし書 | 14条1項 |
| 平27 | 女性再婚禁止期間違憲判決 | 民法733条1項のうち100日を超える部分 | 14条1項・24条2項 |
| 令4 | 在外日本人国民審査権違憲判決 | 最高裁判所裁判官国民審査法 | 15条1項、79条2項・3項 |
| 令5 | 性同一性障害特例法違憲決定 | 特例法の生殖不能要件 | 13条 |
| 令6 | 旧優生保護法違憲判決 | 旧優生保護法の優生手術規定 | 13条・14条1項 |
件数は、議員定数配分の2件をまとめて数えるかなどで、文献により前後します。「だいたい13件」で足ります。
覚え方:3つの傾向でつかむ
数を丸暗記するのではなく、傾向で押さえると引き出しやすくなります。
- 14条1項(平等原則)違反が最多で7件。尊属殺・議員定数2件・国籍法・非嫡出子・再婚禁止・旧優生保護法。「差別」を疑う事案は違憲になりやすい。
- 経済的自由は2件だけ。薬事法(22条1項)と森林法(29条2項)。規制目的二分論の代表例がそのまま違憲判決になっています。
- 在外邦人が2回勝っている。平成17年の選挙権と令和4年の国民審査権。セットで覚えます。
ソクのひとこと
独学でつまずく点:違憲でも選挙は有効
議員定数訴訟で最高裁は、定数配分規定を違憲としながら、選挙自体は無効としませんでした。
選挙を無効にすると議員が不在になり、かえって憲法の予定しない事態を招くためです。最高裁は、行政事件訴訟法31条1項が明文化した一般的な法の基本原則(事情判決の法理)によってこの処理を導きました(最大判昭51.4.14)。判決主文で違憲を宣言しつつ、請求は棄却します。
「違憲と判断された以上、選挙は無効となる」と書かれていたら誤りです。詳しくは議員定数不均衡と一票の格差で解説しています。
混同注意:政教分離の3件は「法令違憲」ではない
政教分離で違憲とされた判例は有名ですが、どれも法令を違憲としたものではありません。違憲とされたのは、具体的な行為のほうです。
| 判例 | 違憲とされたもの |
|---|---|
| 愛媛玉串料訴訟(平9) | 県による玉串料等の公金支出 |
| 空知太神社事件(平22) | 市有地を神社に無償で使わせていたこと |
| 孔子廟事件(令3) | 市による使用料の全額免除 |
法令そのものは対象になっていないため、上の一覧表には入りません。「政教分離で法令が違憲とされた」という肢は誤りです。判断枠組みは目的効果基準とは?政教分離の判例で扱っています。
本試験での問われ方(ここで差がつく)
違憲判決は、条文のすり替えと効果のすり替えで問われます。
- 「議員定数配分規定が違憲と判断された結果、当該選挙は無効となった」→ ✕: 事情判決の法理により、選挙は無効とされていません。
- 「薬事法の距離制限規定は、憲法29条に違反するとされた」→ ✕: 22条1項(職業選択の自由)違反です。29条は森林法のほう。
- 「非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定は、憲法24条に違反するとされた」→ ✕: 14条1項違反です(最大決平25.9.4)。
- 「愛媛玉串料訴訟では、地方自治法の規定そのものが違憲とされた」→ ✕: 違憲とされたのは公金支出という行為です。
- 「女性の再婚禁止期間を定める規定は、その全部が違憲とされた」→ ✕: 違憲とされたのは100日を超える部分です。
○×一問一答で総点検
○か✕を選ぶと、正誤と解説が表示されます。まずは自分で答えてみましょう(アウトプット練習)。
衆議院議員定数配分規定を違憲とした判決では、当該選挙は無効とされた。
薬事法の薬局距離制限規定は、憲法22条1項の職業選択の自由に違反するとされた。
森林法の共有林分割制限規定は、憲法14条1項に違反するとされた。
国籍法3条1項が、父母の婚姻を国籍取得の要件としていた点は、憲法14条1項に違反するとされた。
愛媛玉串料訴訟では、公金支出の根拠となる法令の規定が違憲と判断された。
まとめ
- 法令違憲は令和6年までで13件。14条1項違反が7件と最多、経済的自由は薬事法と森林法の2件だけ。
- 議員定数訴訟は違憲だが選挙は有効(事情判決の法理)。
- 政教分離の3件は法令違憲ではなく、公金支出などの行為が違憲とされたもの。
関連する判例は、議員定数不均衡と一票の格差、目的効果基準とは?政教分離の判例、尊属殺重罰規定違憲判決、薬局距離制限事件、財産権(29条)と正当な補償、司法権の独立と違憲審査権で詳しく解説しています。人権の全体像は基本的人権とは?人権の全体像で俯瞰できます。
違憲判決の一覧は、表を眺めるより○×で問われる形で反復するほうが定着します。ソクトケは無料で人権・行政手続法・民法総則から始められます。無料で始める


