
養育費をめぐるルールは、2026年(令和8年)4月1日施行の改正で大きく変わりました。受験生が落とすのは、①法定養育費(月2万円)と先取特権の上限(月8万円)の数字の取り違え、②「養育費の差押えには債務名義が必要」という改正前の知識のまま、の2点。さらに担保物権では「子の監護の費用」が一般先取特権として問われます。改正点を、改正前後の対比と○×で整理します。
この記事の要点
- 法定養育費=取決めがなくても、離婚のときから暫定的に請求できる(子1人月2万円・766条の3)
- 養育費債権に先取特権=債務名義がなくても差押え可(上限は子1人月8万円・306条3号、308条の2)
- 担保物権では「子の監護の費用」=一般先取特権。順位は③(雇用と葬式の間)(329条1項)
- 執行手続がワンストップ化(財産開示→情報提供命令→差押えを1回の申立てで)
【改正】法定養育費(取決めがなくても請求できる)
改正前は、父母の協議や家庭裁判所の手続で額を取り決めなければ、養育費を請求できませんでした。
改正後は、養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続き子の監護を主として行う父母は、他方に対して暫定的に一定額(子1人当たり月2万円)を請求できます(766条の3)。
- 発生:離婚の日から。支払義務者は毎月末に、その月の分を支払う。
- いつまで:①父母が養育費の取決めをした日、②家庭裁判所の養育費の審判が確定した日、③子が18歳に達した日、のいずれか早い日まで。
- 拒否できる場合:支払能力を欠く、または支払により自らの生活が著しく窮迫する(生活保護受給等)ことを証明したときは、全部または一部を拒める。
- ※改正法施行後に離婚した場合に請求可能(施行前に離婚したケースでは発生しません)。
【改正】養育費債権の先取特権(債務名義なしで差押え)
改正前は、父母間で養育費を取り決めていても、差押えのためには公正証書や調停調書・審判書などの「債務名義」が必要でした。
改正後は、養育費債権に先取特権という優先権が付与され、債務名義がなくても、取決めの文書に基づいて差押えができるようになりました。先取特権が付与される上限額は子1人当たり月8万円です。
※施行前(令和8年3月31日以前)に取決めがされていた場合は、施行後(令和8年4月1日以降)に生ずる養育費に限って先取特権が付与されます。
ソクのひとこと
【担保物権とつながる】子の監護の費用=一般先取特権(306条3号)
養育費(子の監護の費用)は、担保物権では一般先取特権(債務者の総財産を目的とする先取特権・306条)に位置づけられます。改正で、一般先取特権の種類は次の5つになりました。
| 種類 | 条文 |
|---|---|
| ① 共益の費用 | 306条1号・307条 |
| ② 雇用関係 | 306条2号・308条 |
| ③ 子の監護の費用 | 306条3号・308条の2 |
| ④ 葬式の費用 | 306条4号・309条 |
| ⑤ 日用品の供給 | 306条5号・310条 |
「子の監護の費用」は、夫婦間の協力扶助義務(752条)・婚姻費用の分担(760条)・子の監護に関する義務(766条、766条の3)・扶養の義務(877〜880条)に係るもののうち、子の監護に要する費用として相当な額について認められます(308条の2各号)。
順位(329条1項)は、一般先取特権どうしでは①共益 → ②雇用 → ③子の監護 → ④葬式 → ⑤日用品の順です。一般先取特権と特別先取特権が競合すると特別先取特権が優先しますが(329条2項)、共益の費用の先取特権だけは例外で全債権者に優先します。まとめると、優先順位は次のとおりです。
①共益の費用 > 特別の先取特権 > ②雇用関係 > ③子の監護の費用 > ④葬式の費用 > ⑤日用品の供給
執行手続のワンストップ化
養育費を請求するための民事執行では、地方裁判所への1回の申立てで、(1)財産開示手続、(2)情報提供命令(市区町村に給与情報の提供を命じる)、(3)債権差押命令、という一連の手続を申請できるようになりました。
改正前 → 改正後 早見表
| 項目 | 改正前 | 改正後(令和8年4月〜) |
|---|---|---|
| 取決めがない場合 | 請求できない | 法定養育費(子1人月2万円) |
| 差押えの要件 | 債務名義が必要 | 先取特権で債務名義なしでも可(上限 子1人月8万円) |
| 担保物権上の位置 | — | 一般先取特権(306条3号・順位③) |
○×一問一答で総点検
○か✕を選ぶと、正誤と解説が表示されます。まずは自分で答えてみましょう(アウトプット練習)。
令和8年施行の改正により、養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから暫定的に一定額の養育費を請求できるようになった。
法定養育費として請求できる額は、子1人当たり月8万円である。
改正により、債務名義がなくても、養育費債権に基づいて差押えの手続を申し立てられるようになった。
一般の先取特権の順位では、子の監護の費用は雇用関係に優先する。
一般の先取特権は、特別の先取特権に常に優先する。
まとめ
- 法定養育費=取決めなしでも離婚時から請求可(子1人月2万円・766条の3)。
- 養育費債権に先取特権=債務名義なしで差押え可(上限 子1人月8万円・306条3号、308条の2)。
- 担保物権では一般先取特権として順位③(②雇用と④葬式の間・329条1項)。特別先取特権が原則優先・共益費用は例外。
改正の全体像は令和8年の民法改正まとめ、財産分与は財産分与とはで解説しています。先取特権を含む担保物権の全体像は担保物権の全体像、民法の全体像は民法とは?全体像でどうぞ。
養育費は「数字(2万・8万)」と「担保物権での順位」を○×で回すと定着します。ソクトケは無料で人権・行政手続法・民法総則から始められ、親族・担保物権など全分野はプレミアムで○×演習できます。無料で始める


