
弁済と相殺は、債権が消滅する代表的な原因で、会社法と並んで民法の頻出テーマです。受験生が落とすのは、①第三者弁済で「正当な利益」の有無を整理できていない、②相殺で「双方とも弁済期が必要」と誤る、の2点。第三者弁済・受領権者としての外観・相殺適状・相殺の禁止を、○×で整理します。
この記事の要点
- 第三者弁済は原則OK。ただし正当な利益を有しない第三者は、債務者・債権者の意思に反して弁済できない(474条)
- 受領権者としての外観を有する者への弁済は、善意・無過失なら有効(478条)
- 相殺適状=互いに同種の債務・双方が弁済期(受働債権は期限の利益を放棄して相殺可)
- 不法行為(悪意)・生命身体侵害による損害賠償債権を受働債権とする相殺は不可(509条)
弁済:第三者弁済と受領権者の外観
弁済とは、債務の本旨に従った給付をして債務を消滅させることです。
第三者弁済(474条)
債務は、第三者も弁済できるのが原則です。ただし、次の制限があります。
- 正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済できません(474条2項)。また、債権者の意思に反しても弁済できません(474条3項)。
- 債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、または当事者が禁止・制限の意思表示をしたときは、第三者弁済はできません(474条4項)。
「正当な利益を有する者」(例:物上保証人、担保不動産の第三取得者、後順位抵当権者など)は、債務者の意思に反しても弁済でき、弁済によって当然に債権者に代位します(法定代位)。
受領権者としての外観を有する者への弁済(478条)
受領権者ではないが、取引通念上受領権者としての外観を有する者(例:預金通帳と印鑑の持参人)に弁済した場合、弁済者が善意かつ無過失であれば、その弁済は有効となります。
相殺:相殺適状と禁止
相殺とは、互いに同種の債務を負担する当事者が、一方的な意思表示で対当額の債務を消滅させることです(505条)。
相殺適状(505条1項)
- 二人が互いに同種の目的の債務を負担していること。
- 双方の債務が弁済期にあること。ただし、相殺する側は、自分が支払う債務(受働債権)については期限の利益を放棄して相殺できます。取り立てる側の債権(自働債権)は弁済期の到来が必要です。
相殺の意思表示をすると、その効力は相殺適状の時に遡って生じます(506条2項)。
相殺が禁止される主な場合
- 悪意による不法行為、または人の生命・身体の侵害による損害賠償債権を受働債権とする相殺は禁止(509条)。加害者が「被害者への債権と相殺する」ことを許さない趣旨です。
- 差押禁止債権を受働債権とする相殺は禁止(510条)。
- 差押えを受けた債権について、第三債務者が差押え後に取得した債権による相殺は、差押債権者に対抗できません(511条。差押え前に取得した債権による相殺は対抗できます)。
ソクのひとこと
○×一問一答で総点検
○か✕を選ぶと、正誤と解説が表示されます。まずは自分で答えてみましょう(アウトプット練習)。
弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
受領権者としての外観を有する者に対してした弁済は、弁済者が善意・無過失であっても無効である。
相殺をするには、自働債権と受働債権の双方が弁済期に達していなければならない。
悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権として、相殺をすることはできない。
まとめ
- 弁済:第三者弁済は原則可。正当な利益を有しない第三者は債務者・債権者の意思に反して弁済できない(474条)。受領権者としての外観への弁済は善意無過失で有効(478条)。
- 相殺:相殺適状=同種の債務・双方弁済期(受働債権は期限の利益放棄で可)。効力は相殺適状時に遡及(506条)。
- 相殺の禁止:悪意の不法行為・生命身体侵害の損害賠償は受働債権にできない(509条)/差押えと相殺(511条)。
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