
取締役の義務と責任は、会社法で最頻出のテーマです。善管注意義務・忠実義務を土台に、競業避止義務や利益相反取引の規制、そして任務懈怠責任(423条)・対第三者責任(429条)まで、図と○×で整理します。
この記事の要点
- 取締役の義務=善管注意義務(330条)・忠実義務(355条)+競業避止・利益相反(会社の承認が必要)
- 任務懈怠責任(423条)=会社への損害賠償/対第三者責任(429条)=悪意・重過失で第三者へ
- 株主代表訴訟=株主が会社に代わって取締役の責任を追及
取締役の義務
- 善管注意義務(330条・民644条):善良な管理者の注意をもって職務を行う義務。
- 忠実義務(355条):法令・定款・株主総会の決議を守り、会社のため忠実に職務を行う義務。
- 競業避止義務(356条1項1号):会社の事業の部類に属する取引をするには、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認が必要。
- 利益相反取引の規制(356条1項2号・3号):取締役が会社と取引する(直接取引)、会社が取締役の債務を保証する(間接取引)には、承認が必要。
承認なく競業・利益相反取引を行い会社に損害が生じた場合、任務懈怠が推定されるなど、取締役に厳しい扱いがされます。
取締役の責任
| 責任 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 任務懈怠責任 | 423条 | 任務を怠って会社に損害を与えたときの賠償責任 |
| 対第三者責任 | 429条 | 職務につき悪意・重過失で第三者に損害を与えたときの賠償責任 |
競業避止義務違反では、取締役や第三者が得た利益の額が会社の損害額と推定されます(423条2項)。利益相反取引で会社に損害が生じたときは、任務懈怠が推定されます(423条3項)。
株主代表訴訟
会社が取締役の責任追及を怠ることがあるため、株主が会社に代わって取締役の責任を追及できます。原則として6か月前から引き続き株式を有する株主が会社に提訴を請求し、60日以内に会社が訴えを提起しないときに、株主自身が提訴できます。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「取締役が会社の事業の部類に属する取引をするのに、会社の承認は不要である」→ ✕: 承認が必要です(競業避止義務・356条)。
- 「対第三者責任(429条)は、取締役に軽過失があれば成立する」→ ✕: 悪意または重大な過失が必要です。
- 「利益相反取引で会社に損害が生じても、取締役の任務懈怠は推定されない」→ ✕: 任務懈怠が推定されます(423条3項)。
- 「株主代表訴訟は、株主が提訴請求をすれば直ちに提起できる」→ ✕: 原則、会社が60日以内に提訴しないときに株主が提起できます。
○×一問一答で総点検
Q1. 取締役は、会社に対して善管注意義務と忠実義務を負う。
○: 330条(民644条)・355条のとおりです。
Q2. 取締役が競業取引をするには、会社の承認を要する。
○: 競業避止義務に基づく承認が必要です(356条)。
Q3. 取締役の対第三者責任は、職務につき悪意または重大な過失があるときに生じる。
○: 429条のとおりです。
Q4. 取締役が任務を怠って会社に損害を与えても、会社に対して責任を負わない。
✕: 任務懈怠責任を負います(423条)。
よくある質問(FAQ)
Q. 取締役の基本的な義務は? A. 会社に対する善管注意義務(330条)と忠実義務(355条)です。競業避止・利益相反取引には会社の承認が必要です。
Q. 任務懈怠責任(423条)と対第三者責任(429条)の違いは? A. 423条は会社に対する責任、429条は悪意・重過失で第三者に損害を与えた場合の第三者に対する責任です。
Q. 株主代表訴訟とは? A. 株主が会社に代わって取締役の責任を追及する訴えです。6か月前からの株主が提訴請求し、60日以内に会社が提訴しないとき提起できます。
まとめ
- 義務=善管注意義務・忠実義務+競業避止・利益相反(承認が必要)。
- 責任=423条(会社へ)/429条(第三者へ・悪意重過失)。競業・利益相反は推定規定あり。
- 株主代表訴訟で株主が責任追及できる。
取締役は「承認が要る取引」「423条と429条の相手の違い」を○×で固めると失点しません。商法の全体像は商法とは?会社法の全体像で俯瞰できます。あわせて株式会社の機関、株式と株主の権利もどうぞ。
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