
三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)は、憲法の人権規定が私人どうしにどこまで及ぶか(私人間効力)を示したリーディングケースです。結論は間接適用説。憲法は私人間を直接は規律せず、民法90条などを通じて間接的に効く——この枠組みを、わかりやすく整理します。
この記事の要点(3行まとめ)
- 憲法19条・14条などの自由権規定は、国・公共団体と個人の関係を規律するもので、私人相互の関係を直接規律しない
- 私人間の利益調整は、民法90条・709条などの一般条項を通じて間接的に図る(間接適用説)
- 企業には雇用の自由があり、特定の思想・信条を理由に雇入れを拒否しても、当然に違法とはいえない
人権規定は私人間に適用される?——3つの説
三菱樹脂事件で最高裁は、憲法19条(思想・良心の自由)や14条(法の下の平等)は「もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するもので、私人相互の関係を直接規律するものではない」としました。私人間の力関係の不均衡から生じる問題は、立法措置や、民法1条・90条・709条などの一般条項の適切な運用によって調整すべきだ、という立場です(間接適用説)。
企業の「雇用の自由」
本件は、学生運動の経歴を秘匿したことを理由とする本採用拒否が争われたものです。最高裁は、企業は契約締結の自由を有し、いかなる者を雇うか、どのような条件で雇うかを原則として自由に決定できるとして、特定の思想・信条を理由に雇入れを拒否しても、それを当然に違法とすることはできないとしました。
| 判例 | テーマ | 結論のポイント |
|---|---|---|
| 三菱樹脂事件(昭48.12.12) | 思想を理由とする本採用拒否 | 私人間に直接適用せず。雇用の自由 |
| 昭和女子大事件(昭49.7.19) | 学生の政治活動と退学処分 | 私立大学の自律的措置として適法 |
| 日産自動車事件(昭56.3.24) | 男女別定年制 | 民法90条により無効(間接適用の具体例) |
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ3選
- 「憲法14条は私人間に直接適用される」→ ✕: 直接は適用されず、間接適用です。
- 「企業は思想・信条を理由に雇入れを拒否できない」→ ✕: 雇用の自由があり、当然に違法とはいえません。
- 「私人間の差別は民法の一般条項では処理できない」→ ✕: 民法90条などを通じて間接的に調整します。
○×一問一答で総点検
Q1. 三菱樹脂事件で最高裁は、憲法19条・14条の規定は私人相互の関係を直接規律するものではないとした。
○: 間接適用説の核心部分です。
Q2. 企業が特定の思想・信条を理由に労働者の雇入れを拒否することは、それ自体当然に違法である。
✕: 企業には雇用の自由があり、当然に違法とはいえません。
Q3. 私人間の人権侵害は、民法90条などの一般条項を通じて間接的に調整される。
○: 間接適用説の帰結として正しいです。
まとめ
- 三菱樹脂事件=人権規定は私人間を直接規律しない(間接適用説)。
- 調整は民法90条・709条などの一般条項を通じて。
- 企業には雇用の自由。男女別定年制の無効(日産自動車事件)は民法90条が根拠。
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