
行政事件訴訟は、行政書士試験の行政法で毎年問われる最重要テーマです。まずは下の図で、訴訟の種類をどれだけ言えるか試してみましょう。埋められなかったところが、この記事で固めるポイントです。
この記事の進め方
- まず穴埋めに挑戦して、いまの実力を確認する
- 解説で一つずつ穴を埋める(各訴訟の意味と具体例つき)
- 最後に全体図で答え合わせ
まずは穴埋めで実力チェック
下のツリーは、出発点の「行政訴訟」以外、すべて空欄です。どんな訴訟が、どこに枝分かれするか言えますか? マスをタップ(クリック)すると答えが開きます。「答えをすべて見る」で一括表示も可能です。まずは見ずに挑戦してみてください。
答え合わせ用の完成版は、記事の最後にもう一度用意しています。ここから先は、埋まらなかった部分を一つずつ、具体例とセットで解説していきます。
行政事件訴訟は「目的」で2つに分かれる
行政事件訴訟法が定める訴訟は、まず目的で2つに分かれます。
- 主観訴訟…国民の権利利益の保護が目的。抗告訴訟(3条)と当事者訴訟(4条)
- 客観訴訟…自分の利益とは関係なく法秩序の適正維持が目的。民衆訴訟(5条)と機関訴訟(6条)
| 主観訴訟 | 客観訴訟 | |
|---|---|---|
| 目的 | 権利利益の保護 | 法秩序の適正維持 |
| 種類 | 抗告訴訟・当事者訴訟 | 民衆訴訟・機関訴訟 |
| 誰が起こせるか | 権利利益にかかわる者 | 法律に定める者のみ(42条) |
イメージしにくい3つは、具体例で押さえましょう。
- 当事者訴訟(4条)…対等な当事者間の公法上の争い。次の2つに分かれます。
- 形式的当事者訴訟:土地収用の損失補償額を争う訴え(土地収用法133条)
- 実質的当事者訴訟:公務員の地位確認訴訟、憲法29条3項を根拠とする損失補償請求訴訟など
- 民衆訴訟(5条)…自分の利益と関係なく、選挙や公金の適正をただす。例)選挙無効訴訟、住民訴訟
- 機関訴訟(6条)…行政内部の権限争い。例)地方公共団体の長と議会の争い、国の関与をめぐる訴訟
抗告訴訟は条文上6つ
抗告訴訟は「行政庁の公権力の行使(処分)」を直接争う訴訟です。行訴法3条が、次の6つを定めています。
| 訴えの類型 | どんな訴えか | 具体例 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 処分の取消しの訴え | 違法な処分の取消しを求める | 受けた営業停止処分を取り消したい | 3条2項 |
| 裁決の取消しの訴え | 審査請求などの裁決の取消しを求める | 審査請求を退けた裁決を取り消したい | 3条3項 |
| 無効等確認の訴え | 処分・裁決の無効等の確認を求める | 重大な瑕疵のある課税処分が無効だと確認したい | 3条4項 |
| 不作為の違法確認の訴え | 申請への不作為が違法だと確認を求める | 許可申請にいつまでも応答がない | 3条5項 |
| 義務付けの訴え | 処分をすべき旨を命じることを求める | 保育所への入所を認めるよう求める | 3条6項 |
| 差止めの訴え | 処分をしてはならない旨を命じることを求める | される前に違法な処分を止めたい | 3条7項 |
このうち「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」をまとめて取消訴訟と呼びます。
取消訴訟は2つに分かれる
取消訴訟は、何を取り消すかで2類型に分かれます。
- 処分の取消しの訴え(3条2項)…行政庁の処分そのものを争う。例)営業許可の取消処分を取り消したい
- 裁決の取消しの訴え(3条3項)…審査請求に対する裁決を争う。例)審査請求を棄却した裁決を取り消したい
両方を起こせる場合でも、原則として処分の違法は処分取消訴訟で主張し、裁決取消訴訟では裁決固有の違法しか主張できません(原処分主義・10条2項)。ここは頻出の引っかけです。
ソクのひとこと
義務付けの訴えにも2つの型がある
義務付けの訴え(3条6項)は、申請が前提かどうかで2つに分かれます。
- 1号義務付け訴訟(非申請型・直接型/37条の2)…申請を前提とせず、直接「処分せよ」と求める。例)周辺住民が、規制権限を発動するよう求める
- 2号義務付け訴訟(申請型/37条の3)…申請したのに拒否・放置された場合に「処分せよ」と求める。例)許認可の申請を拒否されたので、許可を義務付けるよう求める
申請型(2号)は、拒否処分の取消訴訟や不作為の違法確認訴訟と併合して提起するのが原則です。
ソクのひとこと
答え合わせ:全体像を1枚で
穴埋めは、いくつ言えましたか? これが行政事件訴訟の全体像です。
埋まらなかったところは、解説に戻って具体例とセットで覚え直しましょう。
○×で総点検
行政事件訴訟は主観訴訟と客観訴訟に大別され、抗告訴訟と当事者訴訟は主観訴訟に属する。
民衆訴訟は、自己の法律上の利益にかかわる資格で提起する主観訴訟である。
取消訴訟には、処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えの2類型がある。
差止めの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟である。
よくある質問(FAQ)
Q. 行政事件訴訟は何種類ありますか?
A. 大きく主観訴訟と客観訴訟に分かれます。主観訴訟は抗告訴訟・当事者訴訟、客観訴訟は民衆訴訟・機関訴訟です。さらに抗告訴訟は条文上6つの訴え(処分の取消し・裁決の取消し・無効等確認・不作為の違法確認・義務付け・差止め)に分かれます。
Q. 抗告訴訟と当事者訴訟は何が違うのですか?
A. 抗告訴訟は行政庁の公権力の行使(処分)を直接争う訴訟です。当事者訴訟は、対等な当事者間の公法上の法律関係に関する訴訟で、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟があります。
Q. 取消訴訟の2つの類型とは?
A. 処分の取消しの訴え(行訴法3条2項)と裁決の取消しの訴え(3条3項)です。両方を提起できる場合、処分の違法は処分取消訴訟で主張するのが原則です(原処分主義・10条2項)。
Q. なぜ民衆訴訟・機関訴訟は客観訴訟なのですか?
A. 自分の権利利益の救済ではなく、選挙の適正や行政の権限秩序など、法秩序の適正維持を目的とするからです。そのため、法律に定める場合に、法律に定める者だけが提起できます(行訴法42条)。
まとめ
- 行政事件訴訟は、目的で主観訴訟(権利利益の保護)と客観訴訟(法秩序の維持)に分かれる
- 主観訴訟=抗告訴訟+当事者訴訟、客観訴訟=民衆訴訟+機関訴訟
- 抗告訴訟は条文上6つ。取消訴訟は「処分取消」「裁決取消」の総称で、原則は原処分主義
図を一度で完璧に覚える必要はありません。穴埋めで引っかかったところだけ、ソクトケの○×で繰り返せば定着します。


