
狭義の訴えの利益は、取消訴訟の訴訟要件の一つで、処分性・原告適格に続く第3の関門です。「今この処分を取り消して、現実に意味があるか?」を問います。9条1項括弧書と判例を、○×で整理します。
この記事の要点
- 取消訴訟の訴訟要件=処分性・原告適格・狭義の訴えの利益の3本柱(本記事は第3)
- 狭義の訴えの利益=判決の時点で、処分を取り消す現実的な意味(回復すべき法律上の利益)があるか
- 処分の効果が消滅しても、なお回復すべき法律上の利益があれば訴えの利益あり(9条1項括弧書)
結論:訴訟要件の三本柱の最後
取消訴訟が本案審理に進むには、3つの訴訟要件を満たす必要があります。
| 訴訟要件 | 問い |
|---|---|
| 処分性 | その行政の行為は「処分」か |
| 原告適格 | 原告は取消しを求める「法律上の利益」を持つか |
| 狭義の訴えの利益 | 今、取り消すだけの現実的な利益があるか |
狭義の訴えの利益は、判決の時点(口頭弁論終結時)で判断されるのが特徴です。
処分の効果が消えても残る場合(9条1項括弧書)
行政事件訴訟法9条1項の括弧書は、処分の効果が期間の経過その他の理由で消滅した後でも、なお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者には、訴えの利益を認めています。
つまり「処分の効果が消えた=即・訴えの利益消滅」ではありません。取り消して回復できる法律上の利益が残っているかで判断します。
判例で見る「ある/ない」
- 失われる例:建築確認は、工事が完了すると取消しを求める訴えの利益が消滅(取り消しても完成した建物に影響しない)。運転免許停止処分も、停止期間の経過などで原則消滅。
- 残る例:処分を取り消せば名誉以外の法律上の利益(資格・地位の回復、加算される不利益の除去など)が回復する場合は、効果消滅後でも訴えの利益が残ることがあります。
なお、回復すべきは「法律上の利益」であり、単なる名誉感情や事実上の利益は原則として含まれません。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「処分の効果が期間の経過により消滅すれば、訴えの利益は必ず失われる」→ ✕: なお回復すべき法律上の利益があれば存続します(9条1項括弧書)。
- 「建築確認に基づく工事が完了しても、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われない」→ ✕: 工事完了で訴えの利益は消滅します(判例)。
- 「狭義の訴えの利益は、処分性・原告適格とは別個の訴訟要件である」→ ○: 訴訟要件の三本柱の一つです。
- 「処分を取り消せば名誉感情が回復するから、訴えの利益が認められる」→ ✕: 名誉感情など事実上の利益は原則法律上の利益にあたりません。
○×一問一答で総点検
Q1. 取消訴訟の訴訟要件には、処分性・原告適格・狭義の訴えの利益がある。
○: 三本柱です。
Q2. 処分の効果が消滅した後でも、回復すべき法律上の利益があれば訴えの利益が認められる。
○: 9条1項括弧書のとおりです。
Q3. 建築確認に係る建築工事が完了した後も、当該建築確認の取消しを求める訴えの利益は存続する。
✕: 工事完了により訴えの利益は失われます(判例)。
Q4. 狭義の訴えの利益の有無は、処分時を基準に判断される。
✕: 判決時(口頭弁論終結時)を基準に判断されます。
よくある質問(FAQ)
Q. 狭義の訴えの利益とは? A. 判決時点で処分を取り消す現実的な意味(回復すべき法律上の利益)があるかという訴訟要件です。処分性・原告適格と並びます。
Q. 処分の効果が消滅したら訴えの利益はなくなる? A. 必ずしも消えません。9条1項括弧書により、なお回復すべき法律上の利益があれば認められます。
Q. 建築確認の取消しを求める訴えはいつまで可能? A. 判例は、工事が完了すると訴えの利益が失われるとしています。
まとめ
- 取消訴訟の訴訟要件=処分性・原告適格・狭義の訴えの利益。
- 狭義の訴えの利益=判決時に、取り消して回復すべき法律上の利益があるか。
- 効果消滅後も9条1項括弧書で残る場合あり。建築確認は工事完了で消滅。
訴えの利益は「三本柱の第3」「効果消滅後も括弧書で残る」「判決時基準」を○×で固めると安定します。行政法の全体像は行政法とは?全体像で俯瞰できます。あわせて取消訴訟の原告適格と処分性、執行停止の要件もどうぞ。
ソクトケは無料で人権・行政手続法・民法総則から始められ、行政法の全分野はプレミアムで○×演習できます → 無料で始める


