
執行停止の要件は、行政事件訴訟法で記述でも問われる頻出論点です。取消訴訟を起こしても処分の効力は止まらない(執行不停止の原則)なかで、例外的に処分を止めるのが執行停止。要件(重大な損害・緊急の必要)と消極要件、内閣総理大臣の異議を比較表と○×で整理します。
この記事の要点(3行まとめ)
- 原則は執行不停止(25条1項)。取消訴訟を起こしても処分は止まらない
- 積極要件=処分により生ずる重大な損害を避ける緊急の必要(25条2項)+取消訴訟の係属
- 消極要件=公共の福祉に重大な影響/本案に理由なし(25条4項)。内閣総理大臣の異議(27条)で覆る
結論:原則は「止まらない」、例外で止める
行政処分は、取消訴訟を提起しても効力が止まらないのが原則です(執行不停止の原則・25条1項)。放っておくと判決前に損害が確定してしまうため、例外的に処分を一時停止できるのが執行停止です。
執行停止には、**満たすべき要件(積極要件)**と、**あると認められない要件(消極要件)**があります。
執行停止できるか——フローで判定
要件を一覧で整理
| 区分 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 原則 | 執行不停止 | 25条1項 |
| 積極要件 | 重大な損害を避ける緊急の必要 | 25条2項 |
| 前提 | 取消訴訟などの係属 | — |
| 消極要件 | 公共の福祉に重大な影響/本案に理由がないとみえる(あると不可) | 25条4項 |
| 特則 | 内閣総理大臣の異議で執行停止できない・取消し | 27条 |
積極要件——重大な損害+緊急の必要
処分・処分の執行・手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに、申立てにより執行停止ができます(25条2項)。
- 重大な損害:2004年改正で「回復困難な損害」から緩和されました。判断時は回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度や処分の内容・性質も勘案します(25条3項)。
- 申立てによる:執行停止は当事者の申立てが必要で、裁判所が職権で行うことはできません。
消極要件と内閣総理大臣の異議
- 消極要件(25条4項):①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、②本案について理由がないとみえるときは、執行停止はできません。
- 内閣総理大臣の異議(27条):内閣総理大臣は、やむを得ない場合に理由を付して異議を述べることができ、異議があると裁判所は執行停止をできず、すでに決定していれば取り消さなければなりません(27条4項)。異議を述べたときは、後に国会に報告する必要があります。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「取消訴訟を提起すると、当然に処分の効力が停止する」→ ✕: 原則は執行不停止です(25条1項)。
- 「執行停止は、裁判所が職権で行うことができる」→ ✕: 申立てが必要です。
- 「本案について理由がないとみえても、執行停止は認められる」→ ✕: 消極要件に当たり、認められません(25条4項)。
- 「内閣総理大臣の異議があっても、裁判所は執行停止できる」→ ✕: 異議があればできません(27条4項)。
○×一問一答で総点検
Q1. 処分の取消しの訴えを提起しても、原則として処分の効力は停止しない。
○: 執行不停止の原則です(25条1項)。
Q2. 執行停止は、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに、裁判所が職権で行う。
✕: 要件は正しいですが、申立てによります(職権ではありません)。
Q3. 本案について理由がないとみえるときは、執行停止をすることができない。
○: 消極要件のひとつです(25条4項)。
Q4. 内閣総理大臣の異議があったときでも、裁判所はすでにした執行停止の決定を維持できる。
✕: 異議があれば取り消さなければなりません(27条4項)。
よくある質問(FAQ)
Q. 執行停止は取消訴訟を起こさなくてもできる? A. いいえ。本案である取消訴訟などの係属が前提です。本案で争いながら、付随的に処分の効力等を止めるのが執行停止です。
Q. 「重大な損害」と「回復の困難」の関係は? A. 2004年改正で「回復困難な損害」から「重大な損害」へ緩和されました。判断時は回復の困難の程度を考慮しつつ、損害の性質・程度や処分の内容・性質も勘案します(25条3項)。
Q. 内閣総理大臣の異議に裁判所は従う? A. はい。異議があれば執行停止はできず、決定済みなら取り消さねばなりません(27条4項)。三権分立との関係で批判もある制度です。
まとめ
- 原則は執行不停止(25条1項)。例外として執行停止。
- 積極要件=重大な損害+緊急の必要(25条2項・申立てによる)。
- 消極要件=公共の福祉に重大な影響/本案に理由なし(25条4項)。内閣総理大臣の異議(27条)で覆る。
行政救済は条文の暗記より、「原則→例外→消極要件」を○×で回すと定着します。あわせて審査請求と取消訴訟の違い、取消訴訟の原告適格と処分性もどうぞ。
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