
取得時効と消滅時効の違いは、民法総則の時効で最初に押さえる論点です。ざっくり言うと、取得時効は「占有を続けて権利をもらう」、消滅時効は「権利を使わずに失う」。要件・年数・援用を、図と比較表と○×で整理します。
この記事の要点
- 取得時効(162条)=他人の物を一定期間占有し続けて権利を取得する。善意無過失なら10年、悪意・有過失なら20年
- 消滅時効(166条)=権利を行使しないことで権利が消滅する。債権は主観5年/客観10年の早い方
- どちらも援用(145条)が必要。所有権は消滅時効にかからない
結論:「取得」か「消滅」か
- 取得時効:他人の物でも、所有の意思をもって平穏・公然と占有を続けると、その物の所有権などを取得できます(162条)。
- 消滅時効:権利を行使できるのに一定期間行使しないと、その権利が消滅します(166条)。
同じ「時効」でも、権利を手に入れる方向(取得)と権利を失う方向(消滅)で正反対です。
流れで整理——図解
比較表でひと目で整理
| 取得時効 | 消滅時効 | |
|---|---|---|
| 方向 | 権利を取得 | 権利が消滅 |
| 対象 | 所有権など(占有できる権利) | 債権・所有権以外の財産権 |
| 期間 | 善意無過失10年/悪意・有過失20年 | 債権は主観5年・客観10年の早い方 |
| 起算点 | 占有開始時 | 知った時(主観)/行使できる時(客観) |
| 根拠 | 162条 | 166条 |
取得時効(162条)
他人の物を、所有の意思をもって、平穏・公然と占有し続けると、所有権を取得します。
- 占有開始時に善意無過失だった → 10年(162条2項)
- それ以外(悪意または有過失)→ 20年(162条1項)
「所有の意思」は、占有開始の原因(売買・贈与など)によって客観的に判断され、賃借人のように他人の物と分かって借りている占有(他主占有)では取得時効は進みません。
消滅時効(166条)
債権は、次のいずれか早い方で消滅します(166条1項)。
- 主観的起算点:債権者が権利を行使できることを知った時から5年
- 客観的起算点:権利を行使できる時から10年
債権・所有権以外の財産権は20年(166条2項)です。なお、所有権そのものは消滅時効にかかりません(使わなくても失わない)。確定判決などで確定した権利の時効期間は10年になります(169条)。
援用と起算点——共通の急所
- 援用(145条):時効の効果を受けるには、当事者が「時効を主張する」意思表示(援用)をする必要があります。援用がなければ裁判所は時効で裁判できません。
- 時効利益の放棄:時効が完成する前にあらかじめ放棄することはできません(146条)。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「取得時効は、占有開始時の善意・悪意を問わず一律20年である」→ ✕: 善意無過失なら10年、悪意・有過失なら20年です(162条)。
- 「所有権は、長期間行使しないと消滅時効によって消滅する」→ ✕: 所有権は消滅時効にかかりません。
- 「債権の消滅時効は、権利を行使できる時から10年の一本だけである」→ ✕: 主観5年・客観10年の二本立てで、早い方です(166条1項)。
- 「時効は期間の経過だけで当然に効力を生じ、裁判所はこれを考慮しなければならない」→ ✕: 当事者の援用が必要です(145条)。
○×一問一答で総点検
Q1. 取得時効は、占有開始時に善意無過失であれば10年、それ以外は20年である。
○: 162条2項(10年)・1項(20年)のとおりです。
Q2. 所有権は、長期間行使しなければ消滅時効により消滅する。
✕: 所有権は消滅時効にかかりません。
Q3. 債権は、権利を行使できることを知った時から5年で消滅時効にかかることがある。
○: 主観的起算点から5年です(166条1項1号)。客観的起算点から10年(同2号)の早い方で消滅します。
Q4. 時効の利益は、時効完成前にあらかじめ放棄することができる。
✕: 完成前の放棄はできません(146条)。
よくある質問(FAQ)
Q. 取得時効と消滅時効の一番の違いは? A. 取得時効は占有を続けて権利を「取得」する制度(162条)、消滅時効は権利を行使しないことで権利が「消滅」する制度(166条)です。
Q. 債権は何年で消滅時効にかかる? A. 権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年の、いずれか早い方です(166条1項)。
Q. 時効の援用とは? A. 時効の利益を受ける意思表示です(145条)。援用がなければ裁判所は時効を理由に裁判できません。
まとめ
- 取得時効(162条)=占有継続で取得。善意無過失10年/悪意・有過失20年。
- 消滅時効(166条)=不行使で消滅。債権は主観5年・客観10年の早い方。所有権は対象外。
- どちらも援用(145条)が必要。完成前の放棄は不可(146条)。
時効は「取得か消滅か」「年数」「援用」の3点を○×で回すと混同しません。民法の全体像は民法とは?全体像で俯瞰できます。あわせて時効の更新と完成猶予の違い、物権変動と対抗要件(177条)もどうぞ。
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