
行政行為の「取消し」と「撤回」の違いは、行政法総論の頻出論点です。カギはいつの瑕疵か——成立当初の違法(原始的瑕疵)なら取消し、後から生じた事情なら撤回。効力が遡るか将来だけかも変わります。定義・判例を○×で整理します。
この記事の要点(3行まとめ)
- 取消し=成立当初の瑕疵(原始的瑕疵)を理由に、遡及的に効力を失わせる
- 撤回=後発的な事情を理由に、将来に向かって効力を失わせる
- 撤回は法令上の明文の根拠がなくても、公益上の必要が高ければ可能(最判昭63.6.17)
「いつの瑕疵か」で振り分ける
- 取消し:行政行為に成立当初から瑕疵(違法)があったことを理由に、その効力をはじめにさかのぼって失わせること。
- 撤回:成立時には適法だった行政行為について、後から生じた事情(義務違反・公益上の必要等)を理由に、将来に向かって効力を失わせること。
なお、講学上は「取消し」と呼びますが、行政手続法13条1項1号イの「許認可等を取り消す不利益処分」には、講学上の取消し・撤回の双方が含まれ、いずれも聴聞の対象になります。
職権取消しと撤回の論点
| 取消し | 撤回 | |
|---|---|---|
| 理由 | 原始的瑕疵(成立当初の違法) | 後発的事情 |
| 効力 | 遡及的に消滅 | 将来に向かって消滅 |
| 誰が | 処分庁・上級庁(職権取消し)/審査庁・裁判所(争訟取消し) | 原則として処分庁 |
| 法令の根拠 | 不要(職権取消し) | 明文の根拠は不要(最判昭63.6.17) |
- 職権取消しと出訴期間:行政庁の職権取消しは、私人の取消訴訟の出訴期間とは無関係。出訴期間が過ぎて不可争力が生じても、行政庁は職権で取り消せます。
- 撤回の根拠:最判昭63.6.17は、授益的処分(指定医師の指定)の撤回について、法令上明文の根拠がなくても、撤回すべき公益上の必要性が高ければ撤回できるとしました。
- 制限:相手方に利益を与える処分(授益処分)の取消し・撤回は、相手方の信頼保護の観点から制限されることがあります。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ3選
- 「撤回は処分時にさかのぼって効力を失わせる」→ ✕: 撤回は将来に向かってのみ効力を失わせます。
- 「授益的処分の撤回には常に法令上の明文の根拠が必要」→ ✕: 明文の根拠がなくても可能な場合があります(最判昭63.6.17)。
- 「職権取消しは取消訴訟の出訴期間内に限られる」→ ✕: 出訴期間とは無関係で、経過後も可能です。
○×一問一答で総点検
Q1. 行政行為の撤回は、原則として将来に向かってのみその効力を失わせる。
○: 撤回は将来効が原則です(取消しは遡及効)。
Q2. 相手方に利益を付与する処分の撤回は、法令上の明文の根拠がなければ一切認められない。
✕: 公益上の必要が高ければ、明文の根拠がなくても撤回できます(最判昭63.6.17)。
Q3. 行政庁による職権取消しは、取消訴訟の出訴期間が経過した後はすることができない。
✕: 職権取消しは出訴期間とは無関係で、経過後も可能です。
まとめ
- 取消し=原始的瑕疵・遡及効/撤回=後発的事情・将来効。
- 職権取消しは出訴期間と無関係。撤回は明文の根拠がなくても可能な場合がある(最判昭63.6.17)。
- 授益処分の取消し・撤回は信頼保護で制限されうる。
あわせて公定力・不可争力・不可変更力の違いや、民法の取消しを扱った制限行為能力者の同意・取消し・追認の違いもどうぞ。
行政法総論は、定義の丸暗記より具体例を○×で回すほうが圧倒的に定着します。ソクトケは無料で人権・行政手続法・民法総則から始められ、行政法総論を含む全科目はプレミアムで演習できます → 無料で始める


