
行政指導の「任意性」は、行政手続法で必ず狙われる論点です。行政指導は相手の任意の協力があってはじめて成り立つもの。だから、従わないことを理由に不利益な扱いをしてはいけません。定義・条文・判例を○×で整理します。
この記事の要点(3行まとめ)
- 行政指導は、相手方の任意の協力によってのみ実現される(行政手続法32条1項)
- 指導に従わなかったことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない(32条2項)
- 申請者が「従わない」と表明した後に指導を継続して権利行使を妨げてはならない(33条)
行政指導とは——「処分ではない」お願い
行政指導は、行政機関がその任務・所掌事務の範囲内で、一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為・不作為を求める指導・勧告・助言などで、処分に該当しないものをいいます(行政手続法2条6号)。「お願い」ベースなので、それ自体に法的な強制力はありません。
任意性を支える条文
- 32条1項:行政指導は、あくまで相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
- 32条2項:相手方が行政指導に従わなかったことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない。
- 33条(申請に関連する行政指導):申請者が指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず、指導を継続するなどして申請者の権利の行使を妨げてはならない。
- 35条(方式):行政指導に携わる者は、その趣旨・内容・責任者を明確に示さなければならない(書面の交付を求められたときは原則交付)。
なお、法律に違反する行為の是正を求める行政指導が法律の要件に適合しないと思うとき、相手方は中止等を求めることができます(36条の2)。詳しくは行政指導の中止等の求めで解説しています。
判例——任意性の限界
- 品川マンション事件(最判昭60.7.16):建築確認の留保(行政指導のための保留)について、建築主が指導にもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明したのに、確認処分を留保し続けることは、特段の事情がない限り違法とされました。
- 武蔵野市給水拒否事件(最決平元.11.8):指導に従わせるために給水契約の締結を拒否することは、正当な理由のない給水拒否として水道法に違反するとされました。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ3選
- 「行政指導に従わない者には不利益処分をすることができる」→ ✕: 従わないことを理由とする不利益取扱いは禁止です(32条2項)。
- 「行政指導には常に個別の法律の根拠が必要」→ ✕: 所掌事務の範囲内であれば、個別の根拠は不要が原則です。
- 「申請者が従う意思がないと表明した後も、指導を理由に処分を留保できる」→ ✕: 権利行使を妨げてはなりません(33条)。
○×一問一答で総点検
Q1. 行政指導は、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものでなければならない。
○: 行政手続法32条1項のとおりです。
Q2. 行政機関は、行政指導に従わなかったことを理由として、相手方に不利益な取扱いをしてはならない。
○: 32条2項のとおりです。
Q3. 申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明した後も、行政機関は指導を継続して申請に対する処分を留保することができる。
✕: 権利の行使を妨げてはなりません(33条)。
まとめ
- 行政指導は処分ではないお願い(2条6号)。任意の協力が前提(32条1項)。
- 従わないことを理由に不利益取扱い禁止(32条2項)/申請者の意思表明後の継続で権利行使を妨げない(33条)。
- 任意性の限界は判例(品川マンション・武蔵野市給水拒否)で。
あわせて行政指導の中止等の求めや聴聞と弁明の機会の付与の違いもどうぞ。行政手続法は条文番号ごと○×で固めるのが近道です。
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