
許認可の取消しなどの不利益処分を行う前に、行政庁は相手の言い分を聞かなければなりません。その手続が「聴聞」と「弁明の機会の付与」です。行政書士試験では「どちらが必要になるのか」「両者は何が違うのか」が繰り返し問われる頻出論点。この記事で、対象・方式・手続保障の3点を、判断フローと比較表で一気に整理しましょう。
この記事の要点(3行まとめ)
- 重い処分(許認可の取消し等)=聴聞/それ以外=弁明の機会の付与(13条1項)
- 聴聞は口頭・対審、弁明は書面が原則(29条1項)
- 文書閲覧・参加人・調書/報告書は聴聞だけ。ただし代理人はどちらも選任できる
まずは判断フローで全体像をつかむ
不利益処分で「聴聞か弁明か」を迷ったら、次の順で判断します。
「重い不利益ほど手厚い手続」という発想が一貫している、と押さえると忘れません。
意見陳述の機会は2種類ある(行政手続法13条)
行政手続法は、行政庁が不利益処分をしようとする場合、原則として処分の名あて人に意見陳述の機会を与えなければならないと定めています(13条1項)。その方式が次の2つです。
- 聴聞 — 重い不利益処分に対する、慎重で対審的な手続
- 弁明の機会の付与 — それ以外の処分に対する、簡略な手続
どちらになるかは、処分による不利益の大きさで決まります。
「聴聞」が必要になる重い処分(13条1項1号)
次のような、相手に与える不利益が大きい処分では、聴聞を行わなければなりません(13条1項1号)。
- 許認可等を取り消す処分(イ)※学問上の「取消し」と「撤回」の両方を含みます
- 資格や地位を直接はく奪する処分(ロ)
- 法人の役員の解任、業務に従事する者の解任、会員の除名を命じる処分(ハ)
- そのほか、行政庁が相当と認めるとき(ニ)
たとえば、飲食店の営業許可そのものを取り消す処分は打撃が大きいため、聴聞が必要です。
「弁明の機会の付与」で足りる処分(13条1項2号・29条)
上記の聴聞事由のいずれにも当たらない不利益処分(比較的軽い処分)では、弁明の機会の付与で足ります(13条1項2号)。たとえば数日間の営業停止のような処分です。
弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、「弁明書」という書面の提出によって行うのが原則です(29条1項)。つまり書面審理が原則で、聴聞のような口頭の対審手続ではありません。
ソクのひとこと
一目でわかる比較表
| 項目 | 聴聞 | 弁明の機会の付与 |
|---|---|---|
| 対象 | 許認可の取消し・資格地位のはく奪・役員等の解任 等の重い処分 | それ以外の比較的軽い不利益処分 |
| 審理方式 | 原則口頭(対審的) | 原則書面(弁明書の提出) |
| 主宰者 | あり(19条) | 規定なし |
| 文書(資料)の閲覧 | できる(18条) | できない |
| 参加人 | あり(17条) | なし |
| 質問権 | 主宰者の許可を得て可(20条2項) | なし |
| 調書・報告書 | 作成義務あり(24条) | なし |
| 代理人の選任 | できる(16条) | できる(31条が16条を準用) |
ポイントは、**文書閲覧・参加人・調書/報告書は「聴聞だけ」**であること。一方で、代理人の選任はどちらでもできる点が、よく狙われるひっかけです。
聴聞手続の流れ(通知 → 閲覧 → 期日 → 決定)
聴聞は次の流れで進みます。途中の手続を問う問題にも対応できるよう、網羅的に押さえましょう。
- 通知(15条)— 予定する不利益処分の内容・根拠と、聴聞の期日・場所を書面で通知
- 資料の閲覧(18条)— 当事者等は、通知時から終結時まで、原因事実を証する資料の閲覧を請求できる
- 聴聞の期日(20条)— 出頭して意見を述べ、証拠書類等を提出。主宰者の許可を得て行政庁職員に質問も可
- 調書・報告書(24条)— 主宰者が審理経過の調書と、主張に理由があるかの報告書を作成
- 決定(26条)— 行政庁は調書・報告書の意見を十分に参酌して処分を決定
なお、出頭に代えて陳述書・証拠書類の提出でもよく(21条1項)、正当な理由なく欠席し陳述書も出さない場合は、主宰者は聴聞を終結できます(23条1項)。
試験で狙われるひっかけ5選
- 「弁明でも文書閲覧ができる」→ ✕: 資料の閲覧(18条)は聴聞のみ。弁明にはありません。
- 「代理人は聴聞でしか選任できない」→ ✕: 16条を31条が弁明にも準用し、どちらも選任可です。
- 「申請を拒否する処分には聴聞が必要」→ ✕: 申請拒否処分は不利益処分ではなく「申請に対する処分」(2条4号ロ)。聴聞・弁明ではなく、第2章の理由提示で対応します。
- 「不利益処分なら必ず意見陳述が要る」→ ✕: 金銭の納付を命じる処分や名あて人の同意がある処分などは、13条2項により聴聞も弁明も不要です。
- 「弁明は口頭で行う」→ ✕: 弁明は書面(弁明書)が原則で、行政庁が認めたときだけ口頭です(29条1項)。
意見陳述が「不要」になる主な場合(13条2項ほか)
不利益処分でも、次のときは聴聞も弁明も要りません。例外もセットで覚えると失点しません。
- 公益上、緊急に処分する必要があるとき(13条2項1号)
- 資格の不存在・喪失が判決書等の客観的資料で直接証明されたとき(13条2項2号)
- 金銭の納付を命じ、または金銭の給付を制限する処分(13条2項4号)
- 名あて人の同意の下にする処分(そもそも2条4号ハで不利益処分から除外)
○×一問一答で総点検
Q1. 弁明の機会の付与は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出によって行われる。
○: 弁明は書面審理が原則です(29条1項)。
Q2. 聴聞でも弁明の機会の付与でも、当事者は代理人を選任することができる。
○: 聴聞は16条、弁明は31条の準用により、どちらも選任できます。
Q3. 弁明の機会の付与を受けた者は、行政庁に対し、処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
✕: 資料の閲覧(18条)は聴聞に認められた権利で、弁明にはありません。
Q4. 金銭の納付を命じる不利益処分をしようとするときは、聴聞も弁明の機会の付与も行う必要はない。
○: 13条2項4号の例外に当たります。
Q5. 申請して求めた許認可を拒否する処分をするには、聴聞を行わなければならない。
✕: 申請拒否は「申請に対する処分」であり、聴聞は不要です(2条4号ロ)。
まとめ
- 不利益処分の事前手続は、重い処分=聴聞/それ以外=弁明の機会の付与(13条1項)。
- 聴聞は口頭・対審、弁明は書面が原則(29条1項)。
- 文書閲覧・参加人・調書/報告書は聴聞だけ。代理人はどちらも可。
- 申請拒否は不利益処分ではない/金銭の納付命令などは意見陳述が不要、という例外も頻出です。
ソクから
「不利益処分」と、申請の許認可をめぐる「申請に対する処分」の違いは申請に対する処分と不利益処分の違いで整理しています。間隔反復のしくみはSRS(間隔反復)とは?で、独学全体の進め方は独学で合格するための勉強法5選で解説しています。
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