
不法行為(民法709条)は、債権分野で最頻出のテーマです。「わざと・うっかりで他人に損害を与えたら賠償する」というルール。4つの要件と、使用者責任・工作物責任、消滅時効まで、図と○×で整理します。
この記事の要点
- 不法行為(709条)=故意・過失で他人の権利・利益を侵害し損害を与えた者は損害賠償責任を負う
- 要件は4つ=故意過失・権利/利益侵害(違法性)・損害・因果関係(+責任能力)
- 特殊不法行為=使用者責任(715)・工作物責任(717)。時効=主観3年/客観20年(生命身体は主観5年)
成立要件——4つ
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 故意・過失 | わざと、または不注意で(過失責任の原則) |
| 権利・利益の侵害 | 他人の権利または法律上保護される利益を侵害(違法性) |
| 損害の発生 | 財産的損害・精神的損害(慰謝料) |
| 因果関係 | 加害行為と損害との間の相当因果関係 |
加えて、加害者に責任能力(自分の行為の責任を弁識する能力)があることが必要です。責任無能力者の行為は、原則として監督義務者が責任を負います(714条)。
特殊不法行為
一般の709条に対し、要件が修正された類型があります。
- 使用者責任(715条):従業員が職務の執行について第三者に損害を与えたとき、使用者(会社)も賠償責任を負う。加害従業員本人の709条責任と併存・連帯。
- 工作物責任(717条):土地の工作物の設置・保存の瑕疵で損害が生じたとき、第一次的に占有者が責任を負う(占有者は必要な注意をしたと証明すれば免責)。占有者が免責されると、所有者が無過失責任(免責なし)。
- 共同不法行為(719条):数人が共同して加えた損害は、各自が連帯して責任を負う。
過失相殺と消滅時効
- 過失相殺(722条2項):被害者にも過失があるとき、裁判所は損害額を斟酌できます(不法行為は任意的。債務不履行の418条は必要的)。
- 消滅時効(724条):損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年。ただし生命・身体の侵害は、知った時から5年に延長(724条の2)。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「不法行為の損害賠償請求権は、不法行為の時から3年で時効消滅する」→ ✕: 知った時から3年/不法行為時から20年です。生命身体は知った時から5年(724条の2)。
- 「工作物責任では、占有者が必要な注意をしたと証明しても占有者が責任を負う」→ ✕: 占有者は免責され、その場合所有者が無過失責任を負います(717条)。
- 「不法行為でも、被害者に過失があれば必ず賠償額を減額しなければならない」→ ✕: 不法行為の過失相殺は任意的(722条2項。裁判所が斟酌できる)です。
- 「使用者責任が成立する場合、被害者は加害従業員本人には請求できない」→ ✕: 従業員本人の709条責任も併存し、連帯して責任を負います。
○×一問一答で総点検
Q1. 不法行為の成立には、加害者の故意または過失が必要である。
○: 過失責任の原則です(709条)。
Q2. 人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から5年で時効消滅する。
○: 724条の2の特則です。
Q3. 土地工作物の設置・保存の瑕疵による損害について、所有者は無過失責任を負う。
○: 占有者が免責された場合、所有者は免責されません(717条)。
Q4. 不法行為における過失相殺は、裁判所が必ず行わなければならない。
✕: 任意的で、斟酌できるにとどまります(722条2項)。
よくある質問(FAQ)
Q. 不法行為が成立する要件は? A. ①故意過失、②権利・利益の侵害(違法性)、③損害、④因果関係の4つ(+責任能力)です。
Q. 不法行為の損害賠償請求権の時効は? A. 知った時から3年・不法行為時から20年(724条)。生命身体の侵害は知った時から5年(724条の2)です。
Q. 使用者責任(715条)とは? A. 従業員が職務の執行で第三者に損害を与えたとき、使用者も連帯して賠償責任を負う制度です。本人の709条責任と併存します。
まとめ
- 不法行為(709条)=故意過失・権利利益侵害・損害・因果関係の4要件。
- 特殊不法行為=使用者責任(715)・工作物責任(717・所有者は無過失)・共同不法行為(719)。
- 過失相殺は任意的、時効は主観3年/客観20年(生命身体5年)。
不法行為は「4要件」「特殊類型」「時効」を○×で固めると失点しません。民法の全体像は民法とは?全体像で俯瞰できます。あわせて損失補償と国家賠償の違い、債権者代位権と詐害行為取消権の違いもどうぞ。
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