
行政代執行(行政代執行法)は、行政上の義務履行確保のうち、行政書士試験で最頻出の手段です。ポイントは、対象が代替的作為義務に限られることと、戒告→通知→実行→費用徴収という手続の流れ。要件と手続を、フロー図と○×でわかりやすく整理します。
この記事の要点
- 代執行=代替的作為義務を義務者が果たさないとき、行政庁が代わりに(または第三者に)行い、費用を義務者から徴収する制度
- 対象は代替的作為義務のみ。不作為義務・非代替的作為義務・金銭給付義務は対象外
- 要件は①法令等による命令 ②他の手段では困難(補充性)③放置が著しく公益に反するの3つ(2条)
- 手続は戒告→代執行令書による通知→実行→費用徴収。費用は国税滞納処分の例で強制徴収(6条)
代執行とは
代執行とは、法令または法令に基づく命令による代替的作為義務(他人が代わって行うことのできる作為義務)を義務者が履行しない場合に、行政庁が自らその行為をし、または第三者にこれをさせ、その費用を義務者から徴収する制度です(行政代執行法2条)。違法建築物の除却命令に従わないときの取り壊しが典型例です。
行政代執行法は、この代執行についての一般法です。同じ行政上の強制執行でも、執行罰・直接強制・強制徴収には一般法がなく、個別の法律が必要になります。
対象は「代替的作為義務」だけ
代執行できるのは、代替的作為義務に限られます。次のものは代執行の対象になりません。
| 義務の種類 | 例 | 代執行 |
|---|---|---|
| 代替的作為義務 | 違法建築物の除却、立木の伐採 | できる |
| 非代替的作為義務 | 健康診断の受診、証人としての出頭 | できない |
| 不作為義務 | 営業をしない義務、建築をしない義務 | できない |
| 金銭給付義務 | 税・手数料の納付 | できない(強制徴収の問題) |
「本人でなければ意味がない義務」(非代替的作為義務)や、「〜してはならない」という不作為義務は、代わりに行うことができないため、代執行になじみません。
3つの要件(2条)
代替的作為義務の不履行があっても、それだけで代執行できるわけではありません。他の手段による履行確保が困難であること(補充性)と、放置すると著しく公益に反することの両方が必要です(2条)。
手続の流れ:戒告→通知→実行→費用徴収
ただし、非常の場合や危険が切迫し、緊急の必要があって戒告・通知の手続をとる暇がないときは、これらを経ずに代執行できます(3条3項)。また、戒告および代執行令書による通知は処分性が認められ、取消訴訟の対象になると解されています。
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「不作為義務の不履行についても代執行ができる」→ ✕: 代執行は代替的作為義務に限られます。不作為義務や非代替的作為義務は対象外です。
- 「代執行に要した費用は、義務者が納付しない場合、民事訴訟によらなければ徴収できない」→ ✕: 国税滞納処分の例により強制徴収できます(6条)。
- 「代執行を行うには、いかなる場合も事前の戒告と代執行令書による通知が必要である」→ ✕: 緊急の必要があり手続をとる暇がないときは省略できます(3条3項)。
- 「行政代執行法は強制執行の一般的な通則法であり、直接強制もこれに含まれる」→ ✕: 行政代執行法は代執行のみの法律です。直接強制は別に法律の根拠が必要です。
○×一問一答で総点検
○か×を選ぶと、正誤と解説が表示されます。まずは自分で答えてみましょう(アウトプット練習)。
代執行は、代替的作為義務の不履行があった場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者にこれをさせ、その費用を義務者から徴収する制度である。
不作為義務や非代替的作為義務の不履行についても、行政代執行法に基づく代執行をすることができる。
代執行に要した費用は、義務者が納付しないとき、国税滞納処分の例により強制徴収することができる。
代執行を行うには、いかなる場合であっても、あらかじめ文書による戒告と代執行令書による通知を経なければならない。
よくある質問(FAQ)
Q. 代執行できる義務は何ですか?
A. 「代替的作為義務」(他人が代わってできる作為義務、例:違法建築物の除却)に限られます。不作為義務や本人でなければ果たせない非代替的作為義務、金銭給付義務は対象外です。
Q. 代執行の手続の流れは?
A. ①戒告→②代執行令書による通知→③代執行の実行→④費用の徴収、が原則です。ただし緊急の必要があるときは戒告・通知を省略できます(3条3項)。
Q. 代執行の費用は取り立てられますか?
A. 義務者から徴収でき、納付しないときは国税滞納処分の例により強制徴収できます(6条)。
まとめ
- 代執行=代替的作為義務の不履行に対し、行政庁が代わって行い費用を徴収する制度(2条)。
- 対象は代替的作為義務のみ。不作為義務・非代替的作為義務・金銭給付義務は対象外。
- 要件は命令+補充性+著しく公益に反する(2条)。
- 手続は戒告→通知→実行→費用徴収。費用は国税滞納処分の例で強制徴収(6条)。緊急時は手続省略可。
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