
行政罰は、行政上の義務違反に対する制裁です。刑法の刑名がある行政刑罰と、過料である秩序罰の2つに分かれ、手続も適用ルールも異なります。将来の履行を強制する執行罰との違いまで整理します。
この記事の要点
- 行政罰=過去の義務違反への制裁(将来の履行を強制する執行罰とは別物)
- 行政刑罰=刑法に刑名のある罰(懲役・罰金等)。刑事訴訟法の手続・刑法総則が適用
- 秩序罰=過料。刑罰ではなく、刑法総則・刑事訴訟法は適用されない
- 行政刑罰と秩序罰は、目的が異なれば併科も可能(判例)
行政刑罰
行政刑罰は、刑法に刑名のある罰(懲役・禁錮・罰金・拘留・科料など)を、行政上の義務違反に対して科すものです。
- 原則として刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続によって裁判所が科します。
- 両罰規定:違反行為をした従業者だけでなく、その事業主(法人・使用者)にも罰金刑を科す定めが置かれることがあります。
- 通告処分(国税犯則事件・道路交通法の反則金など):一定の場合に、刑事手続によらず金銭の納付を通告し、納付すれば公訴を提起しない仕組みもあります。
秩序罰(過料)
秩序罰は、届出義務違反など比較的軽微な行政上の秩序に対する違反に科される過料です。
- 刑罰ではないため、刑法総則・刑事訴訟法は適用されません。
- 科す主体は違反の種類で異なります。
- 法令違反の過料 → 非訟事件手続法により裁判所が科す。
- 地方公共団体の条例・規則違反の過料 → 地方公共団体の長が科す(地方自治法149条・255条の3)。
行政刑罰と秩序罰の比較
| 項目 | 行政刑罰 | 秩序罰 |
|---|---|---|
| 内容 | 懲役・罰金など(刑名あり) | 過料(刑罰でない) |
| 刑法総則・刑訴法 | 適用あり | 適用なし |
| 科す主体・手続 | 裁判所(刑事訴訟法) | 裁判所(非訟)/長(条例・規則違反) |
ソクのひとこと
試験で狙われるひっかけ4選
- 「秩序罰(過料)にも刑法総則が適用される」→ ✕: 秩序罰は刑罰ではなく、適用されません。
- 「行政刑罰と秩序罰を同一の義務違反に併科することはできない」→ ✕: 目的が異なれば併科できます(判例)。
- 「条例違反に対する過料は、常に裁判所が科す」→ ✕: 条例・規則違反の過料は地方公共団体の長が科します。
- 「行政罰は、将来の義務の履行を強制するための手段である」→ ✕: それは執行罰です。行政罰は過去の違反への制裁です。
○×一問一答で総点検
○か×を選ぶと、正誤と解説が表示されます。まずは自分で答えてみましょう(アウトプット練習)。
行政刑罰は、刑法に刑名のある罰であり、原則として刑事訴訟法の手続により科される。
秩序罰である過料には、刑法総則が適用される。
地方公共団体の条例に違反した者に対する過料は、その地方公共団体の長が科す。
行政罰は、義務者に将来の義務の履行を強制するために科される。
よくある質問(FAQ)
Q. 行政刑罰と秩序罰の違いは?
A. 行政刑罰は刑法に刑名のある罰で刑事訴訟法・刑法総則が適用されます。秩序罰は過料で刑罰ではなく、それらは適用されません。
Q. 行政刑罰と秩序罰は併科できる?
A. 両者は目的を異にするため、判例上、同一の行為に併科することも可能とされています。
Q. 行政罰と執行罰はどう違う?
A. 行政罰は過去の義務違反への制裁です。執行罰は将来の義務履行を強制する手段で、制裁ではありません。
まとめ
- 行政罰=過去の義務違反への制裁(執行罰=将来の強制とは別)。
- 行政刑罰=刑名あり・刑法総則/刑訴法適用・両罰規定。
- 秩序罰=過料・刑罰でない・非訟事件手続法(裁判所)/長(条例・規則違反)。
- 行政刑罰と秩序罰は併科可(判例)。
行政法の全体像は行政法とは?全体像(作用・手続・救済)で俯瞰できます。あわせて行政上の義務履行確保(強制執行・即時強制)や即時強制と直接強制の違いもどうぞ。
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